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転がって逆さまになったローファーに気をとられながらも、その香りの元を反射的に探していた。
校舎を出ていく、小柄な女子生徒の後姿が見える。
その他には、誰の姿もなかった。
一つに束ねた長い黒髪が、足を進める度に左右に揺れる。
その光景は、夢なのか現実なのか、真理子を混乱させる眺めだった。
いつしか、バタバタと棚の間を走りすぎる音が聞こえてきた。
それは慌てた様子で、真理子の近くを通り過ぎ、少女の後ろに追いついた。
真理子の目は、彼女をずっと追っていた。
孝が彼女の肩を捕まえて、なにやら囁きながら校門を出て行くまでずっと、見つめていた。
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