3:悪夢をみせて

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それから再び歩き出したものの、やけに八木のスピードは遅くなったせいで、真理子が半歩前を歩く形に変わった。 「ちょっとロマンチックだね」 「うん」 「あ、今、『隣にいるのが孝だったらなあ』って思ったでしょ」 「思ってないよ!」 八木の笑い声につられて、真理子も笑う。 それからも、八木はいつもの調子で彼女を笑わせ続けるものだから、家までの道のりがとても短く感じた。 おかげで家に着いた時には、彼女の頭に浮かんだ疑問なんて、跡形もなく吹き飛んでしまっていたのだった。
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