3:悪夢をみせて

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ドアが閉まる音がして、水音が遠くで聞こえ出す。 静かに目を閉じると、クラリと頭が揺れた。 どのくらい時間が経ったのだろう。 もしかしたら、眠っていたのかもしれない。 気がつくと、着替えた孝が、真理子の肩を揺らしていた。 「俺、行くよ。また明日な」 真理子が小さく頷くと、孝はすぐに部屋を出て行った。 玄関のドアが閉まる音がして、途端に物悲しい静けさが満ちる。 真理子はぼんやりと天井を眺めていた。 白い天井に、小さく広がる染みが一つ。 その茶色い汚れは、一段と大きさを増しているように思えた。
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