3:悪夢をみせて

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「一年生……名前は?」 真理子は、さりげなさを装いながら尋ねた。 しかしその瞳は、明らかに不安げに揺れ動いている。 「名前までは分かんないんだけどさあ」 「そう」 なんとか心を落ち着けようと、ゆっくり息を吸い込む。 肺を満たすのは、さっきと同じ、生ぬるい空気だけ。 もう、爽やかな柑橘系の香りなど、どこかに行ってしまったようだった。
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