3:悪夢をみせて

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真理子の手は、知らぬ間に鞄の中をまさぐっていた。 ない、ない、ない……。 教科書、ノート、携帯電話、鏡、ポーチ……。 手に触れるものは、どれも彼女の探しているものではなくて。 とうとう目の前の色彩は薄れ始め、全部が全部、灰色に染まっていた。 ただでさえ暗い鞄の中で、何もかもが灰色だなんて、探しにくい事この上ない。 しかし、灰色に姿を変えたハンドタオルを押しのけると、その下から真っ赤な箱が覗いた。
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