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しばらく見ていると、彼女は携帯電話を耳に当て始めた。
そして何秒か待ったあと、楽しげな声を響かせたのである。
「あ、孝ー?なんでメール返してくれなかったのさあ」
いつも真理子が聞いている彼女の声とは思えないほど、高い、舌足らずな声。
しかしその中で発音された『孝』という単語を、彼女は聞き逃さなかった。
思わずビクリと肩が震える。
高まりかけた感情をすぐに抑えることが出来たのは、不意に肩に置かれた八木の手のおかげだった。
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