5:境目のない世界

7/59
前へ
/278ページ
次へ
「もう!これ、無くさないでねって言ったのにい」 奈美がふくれっ面をして見せても、孝はそっぽを向いて見せるばかり。 「そんなもん、本当はしたくねえんだよ。面倒くせえな」 「なによお」 奈美は孝の前に膝をつくと、彼の髪を掻き揚げて、耳を覗かせた。 右の耳には鈍い輝きを放つピアスが収まっていたが、左の耳には小さな穴があるばかり。 それを見て、奈美はハンカチからピアスを摘み上げた。
/278ページ

最初のコメントを投稿しよう!

578人が本棚に入れています
本棚に追加