5:境目のない世界

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「お前も、ひっでえ女だなあ。真理子、友達だろ?」 孝が奈美を見下ろしながら言うと、奈美はペロリと唇を舐めた。 いつもヌラヌラと光っているグロスは、ほとんど剥がれ落ち、唇の端からだらしなく伸びている。 それを、孝の長い指が拭った。 「誘ってきたのは、そっちでしょお」 奈美が目を細める。 話し声の合間に、エアコンの音が鈍く聞こえていた。
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