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奈美はベランダに出て、電話の相手に向かって笑顔を見せていた。
口を大きく開いて話してはいるのだが、窓はきっちりと閉められているので会話までは聞こえない。
室外機の前で手すりにもたれているせいで、短いスカートが絶え間なく翻っていた。
孝は、しばらく天井とベランダを交互に見ていたが、やがて勢い良く立ち上がった。
それから、大股でベランダへの窓に手をかけると、大きな音を立てて開く。
その音に気がついて、奈美は二言、三言早口で言ってから、手早く携帯電話から顔を離した。
「いつまで話してんだよ」
「……ごめん」
俯く奈美を、孝が体で押して、室外機の上に座らせた。
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