2:夢という名の言い訳

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奈美はそれ以上追及することはなかった。 肩をすくめて自分の席に向き直ると、ポーチから取り出したグロスを唇に押し付ける。 唇に乗り切らないグロスが、零れ落ちまいとするように懸命にへばりつく様子は、どこか滑稽で。とてもおしゃれな行為とは思えなかった。 真理子は自分の手のひらを軽く広げて、隅から隅まで目を走らせた。 白く弾力のある肌が、蛍光灯の下で青白く光っている。 右手の人差し指だけは、先に赤い染みが付いていた。 一番前の窓際の席は、いつまでも現れない持ち主を静かに待っている。 担任の教師が入ってきても、期待を捨てることなく、胸を張って待っているのだった。
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