2:夢という名の言い訳

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担任の教師は早くも額に汗を浮かべながら、朝の挨拶を済ませると、目を落ち着きなく動かしながら、奈々の死を告げた。 生徒達は口を開くことなく、それを受け止めた。 すでに全員が承知のことであったし、まだ実感がないからとも言えた。 それでも、教師が奈々の通夜と葬式の日時を告げるて出て行くと、教室中で声が飛び交った。 それまで半信半疑だった奈々の死を確信して、泣き出す女子生徒もいる。 けれども大半の生徒達にとっては、真新しい話題の一つに過ぎなかった。 殺人という絶好の話題に盛り上がる男子生徒たちの興味はもっぱら、取材に来るかもしれない報道陣に集中した。 一時間目の授業は自習に変更となったが、誰も机に座ってはいない。 携帯電話で、奈々の死が報道されていないかチェックするのに、誰もが追われていた。
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