1:プロローグ

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少女の足はよどみなく動き続けていた。 目的地が分かっているような、しっかりとした足取り。 しかし、彼女の頭は不安定に左右に揺れていた。 一歩踏み出す度に、重たそうにふらついている。 花屋の前を通りかかると、道路には黄色がかった花びらが一枚落ちていた。 水分を失って干からびかけたそれを、少女のほっそりとした足が、ためらいなく踏み潰す。 花びらは抵抗することもできずに、僅かに残った水分を押し出されて、無様にアスファルトに張り付いた。 少女が次の一歩を踏み出すと、靴の裏に付着した液が小さな染みを道路に残す。 しかし、それ以上の跡をつけることはなかった。
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