2:夢という名の言い訳

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けれども真理子は、それを拭い取ることはしないだろうと思った。 目立たない程度の汚れであり、朝になって目覚めれば忘れてしまっているに違いなかったのだから。 だんだんと瞼が重くなり、閉じるにまかせようとしていたときだった。 けたたましいほどの音量で、眠りを誘うには不釣合いな、テンポの速いメロディーが流れ出した。 飛び上がって机の上の携帯電話のボタンを押すと、メロディーはタイミングを見計らうこともなく消えた。 元の静けさが返ってくるが、大きく跳ねる心臓が耳にドクドクと振動を与えている。 それを意識すればするほど、音が大きくなるような気がして、めまいさえ覚えた。 耳をすませて家族が起きてこないことを確認してから、もう一度ベッドに入ると、生暖かくなった布団が真理子を迎えてくれた。
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