2:夢という名の言い訳

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目がくらむほどの光を放つ液晶画面に目を細めてメールを送りつけてきた相手を確認する。 思わず口に出てしまったのは孝の名前だった。 彼の名前を口にするのは、久しぶりのことだ。 その名前を言えば、会いたくなる。会えば、隣にいたくなる。隣にいたら……。 とめどなく溢れ出る思いをせき止めるために、真理子はその名前を口にすることはなかったのである。 思い出すときには心の中でだけ。そう決めていた。 受信したメールを開く操作を進める指は、震えてなどいなかった。 まだ内容など見てもいないくせに、どこか自信に満ちている。
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