2:夢という名の言い訳

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画面を見つめ、何度も何度も繰り返し、文章を読む。 しばらく経つと、一定時間何も操作をしなかったために、画面は光を失い、画面に浮かんでいた鮮やかな色彩は姿を消した。 黒い画面に映る真理子の顔は、笑っていた。 こらえきれずに、口の端から溜め息にも似た笑い声が洩れる。 「孝……」 まるで隣で彼が寝ているような気がして手を伸ばすと、だれもいないシーツがひんやりと手のひらを冷やした。 それでも、彼女は満足げな笑みを浮かべて眠りに落ちていった。 夢もみることなく、深い深い眠りに誘われている彼女の頭に、天井の染みのことなど少しも残ってはいなかった。
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