2:夢という名の言い訳

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学年中の男子からも女子からも敬遠されそうな風貌ではあるのだけれど、意外と彼は人気があるから不思議だ。 恐らく、持ち前の明るさと、性格の良さ、そしてずば抜けて高い成績などが影響しているのだろう。 しかし、その人気が恋愛対象としてのものとならないのは、やはり外面的な問題があったからであった。 「何してんのよ」 真理子は苦笑交じりに言った。 『朝早くここにいるなんて珍しい』という意味と、『よくも胸を触ったわね』という意味を込めたのだが、八木はどっちともつかないような息を吐き出しただけだった。 もっとも、八木が故意にいやらしいことをするような男ではないと真理子も分かっていたから、それ以上何も言わなかった。 偶然にしては、あまりに彼に都合のいいタイミングではあったけれど。
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