2:夢という名の言い訳

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「真理子ちゃんこそ、早いじゃん。 朝から部室に来たことなんて、あったっけ?」 「失礼な!……まあ、朝来たのは初めて、かな」 「ほら」 ニヤリと笑って、八木は大きな身体を揺らして座りなおす。 その重たい身体に圧迫されて、椅子が悲痛な叫びを上げた。 膝に抱えた鞄に顔を突っ込むようにして中を探り出した八木を見ながら、真理子は彼の向かいに腰を下ろす。 そして床に手を伸ばすと、山積みにされた本の山から、一冊の本を抜き出した。 「これ、取りにきたの」 「ああ、それ真理子ちゃんのだったんだ」 「うん。人に借りてたやつだから、返さなくちゃいけなくて」 「ふーん」 興味なさそうに答えてから、彼は鞄の中から何かを取り出して、机に置いた。
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