2:夢という名の言い訳

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「っていうか、『本読むんだ』って失礼でしょ。 私、これでも一応、文学部なんですけど」 「ぼくもね」 八木はそういってニヤリと笑うと、辺りを見回した。 文学部の部室として使っているこの部屋は、数年前まで物置だったのを、無理言って部室にしてもらったのだとか。 もともと日当たりなんて考慮していない設計だったのだろうが、それにしても一日中暗い部屋である。 床にはあちこちに本が積み重なっている。 いや、正確には漫画ばかりなのであるが。 真理子がこの高校に入学してきた時に、3年生が3人いるだけだった文学部に入部したのは、楽ができそうだからという理由だけだった。 そして、同じ学年で入部したのが八木だったのである。
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