2:夢という名の言い訳

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3年生が卒業してしまうと、この部室にくるのは真理子と八木の2人だけになってしまった。 勧誘活動なんて、しようとも思わなかったおかげで、1年生は1人も入部しなかったからだ。 たぶん、彼らは文学部の存在さえも知らない可能性が高い。 それでも真理子は、定年間近のおじいちゃん先生のお茶に時々付き合うことさえ忘れなければ、他に活動する必要もないこの部活が気に入っていた。 もちろん、文学部とは名ばかりで、持ち寄った菓子を片手に漫画を読むことができるということが、最大の魅力でもあった。 「やっべ」 手にしたチョコレートをいつまでも食べなかったせいで、溶けたチョコレートが指に付いたらしい。 八木が慌てて指をしゃぶるもんだから、真理子は笑ってそばにあったティッシュを手渡した。
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