2:夢という名の言い訳

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孝から二通目のメールが届いたのは、四時間目の授業中だった。 頬杖をついてうつらうつらしていた真理子の机が小刻みに揺れ、マナーモードにしている携帯電話の受信を知らせた。 机の中から携帯電話を音を立てないように引き抜き、教師が黒板に書き込んでいるのを確認してから、画面に目を落とす。 『今日、一緒に帰れる?』 真理子は俯いたまま、ほくそ笑んだ。 そして返信せずに、机の中に携帯電話を戻す。 眠気はどこかへ吹っ飛んでしまったようだった。 突然晴れ晴れとした気分になった真理子は、珍しくシャープペンシルを取り出すと、熱心に黒板の文字を写し始める。 ほとんど授業は寝て過ごす彼女にとって、ノートを開くことさえ珍しいことだった。 それを目ざとく見つけたのは奈美。 机に出しているのは鏡と手帳、そして色とりどりのカラーペンばかりという彼女は、真理子の二の腕を突っついた。
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