2:夢という名の言い訳

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「なに?」 「なにじゃねえよ。メール送っといただろ」 真理子の腕を強く握る男は、今時珍しいくらいの、ほとんど金に近いほど明るい茶髪。 そしてそれにふさわしくない、整えられた黒い眉毛を吊り上げていた。 「この間のメールだって、返事くれないしさ。 そんなに嫌わなくたって、いいじゃん」 掴まれた腕が痛いのか、それとも男と口をきくのが嫌なのか。 どちらともつかないながら、顔をしかめる真理子を見て、男は慌てて手を離した。 「あ、痛かった?ごめんな」 この男の『ごめん』を何回聞いたのだろう。 真理子には思い出すことが出来なかった。 そしておそらく、これからも数限りない『ごめん』を聞くことになるのだろう。そう思った。
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