2:夢という名の言い訳

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「本当にダメなの?なんで?」 そういう孝の言葉にも、真理子が答えることはなかった。 少しでも言葉を発したら、その隙間にぬるりと入り込んでくるのが分かっていたから。 そういう男なのだ、と知っていたから。 「ねーえ、無視しないでよ」 背の高い彼が腕を組んで仁王立ちすると、広いはずのエントランスが、やけに狭く感じられた。 ましてや、2人が前に立っている自動ドアなど、通れないように塞がれてしまっているように見える。 もっとも、鍵がなければ開かないドアなので、2人が動かなかったとしても開きっぱなしということにはならないのだけれど。
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