2:夢という名の言い訳

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「なんで、そんな遠くいくんだよ。 ここでいいじゃん、ここで」 ポンポンと叩いて見せたのは、彼の隣のソファーの上。 真理子はそこを一瞥したものの、黙って背を向けた。 しかし、背後に気配を感じた瞬間、絡まる腕が動きを封じてしまった。 「なんで逃げるんだよ」 孝が耳元で呟いた。 彼の低い声が、耳をくすぐる。 遠くなっていた記憶が、突然目の前に現れて、心臓が早鐘を打ち始める。 「やっぱり、怒ってんの?」 真理子が身をよじっても、彼の腕は力を抜くことはなかった。 それどころか、さらに強い力で、締め付ける。
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