2:夢という名の言い訳

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「俺……真理子を傷つけちゃったよな」 孝が、真理子の髪をすくい取る。 彼の指先が、頭皮をくすぐるのが気持ちよくて、思わず目を閉じた。 「ごめんな」 彼は口元に髪をあてると、嬉しそうな声をあげた。 「真理子、まだこのシャンプー使ってたんだ。俺と同じやつ」 真理子は小さく息を吐き出しただけだった。 それでも孝は、静かに髪をなで続ける。 「やっぱり、真理子が好きなんだよ。 こんなに俺を想ってくれるやつなんか、他にいないじゃん?」 少し笑って頬に唇を寄せる。 真理子はただ、ぼんやりと天井を眺めていた。
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