2:夢という名の言い訳

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「ねえ、同じ夢ってみることある?」 真理子は八木に聞いた。 ここは文学部の部室。 誇りっぽい机にスナック菓子を並べて、2人は漫画を片手に向かい合っていた。 「夢?みるでしょ、夢くらい」 「そうかなあ。例えばどんな夢?」 「うーん。ぼくは、同じ家の夢をよくみるかな。 よくって言っても、数ヶ月に一回くらいだけど」 「同じ家の夢……かあ」 真理子は机の上のスナック菓子を一つつまんだ。 手に触れた瞬間、油が指にべたつくのが分かる。 口に放り込んで指をなめると、小さな固まりになった塩が舌を刺激した。
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