2:夢という名の言い訳

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「八木くん……こんなに食べる気なの?」 「もちろん、真理子ちゃんのもあるよ。ここから家に持って帰っていいからね」 「あ、ありがとう。でも、家って言われても家族はチョコレートとか甘いものが苦手で……」 「そうなんだあ」 残念そうに肩をすくめながらも、『良かった』と小声で呟く八木を見つめる。 家族に食べられたくないほど、自分で独り占めしたいんだろうなと思うと、呆れを感じるよりも先に、彼の体が心配になってしまう真理子だった。 「じゃあ、とりあえずこれは頂いていくね。ありがとう」 そう言ってニ箱のプチショコラを鞄に詰めるのを、八木は満足そうに見つめて、残りを古びた冷蔵庫に押し込み始めた。
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