2:夢という名の言い訳

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その日も、真理子の携帯には孝からメールが届いていた。 案の定、家に来たいという。 このごろでは真理子も、いつ彼が来てもいいように、常に部屋を片付けるようにしていた。 両親は共働きで、家に帰ってくるのはいつも深夜。 留守にしている間、娘が何をしているかなど、特に気にしていないようだった。 興味がない、というよりかは、真理子を全面的に信用しているといったほうが正しいかもしれない。 しかし真理子にとっては、その二つの間に大きな違いがあるとは思えなかった。 両親と会話をする時間がほとんどない彼女にとって、両親がどちらの目で自分を見ているかなど興味がない。 結局、一緒に過ごす時間がないのだという結論だけが、彼女の全てだったのである。 けれど、真理子は決して両親が嫌いだったわけではない。 自分のために必死に働いてくれているのは理解していたし、だからこそ会う時間が取れないのだと知っていた。 彼女は彼女なりに、両親を愛していた。
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