1:プロローグ

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手をかけると、扉はそうするのが当然だと言うように、音も立てずに少女の側に開いた。 少女は中に入り、手を離す。 背を向けていても、扉が閉まるのが気配で分かった。 ガチャリと重い音を立てたような気もしたが、それは気のせいだったに違いない。 靴を脱ぐことを考える様子もなく、少女は進んで行った。 ローファーが、板の上を進む。 悲鳴をあげるように床が沈んでは戻ったが、音は聞こえなかった。 テレビの音声を切ってしまったかのような静けさが、少女を包む。 彼女が向かったのは、二階。 階段を上がってすぐの扉の前で、再度足を止めた。
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