2:夢という名の言い訳

70/82
前へ
/278ページ
次へ
その夜も、真理子の夢に出てきたのは同じ少女だった。 高校の下駄箱で靴を履き替えて、歩き始める。 そして真理子の前を通過した。 その瞬間、爽やかな柑橘系の香りが、たなびく髪から零れ落ちていった。 思わず何か大切な事を思い出したような気分になって、真理子は目を閉じた。 やけにリアルな香りが、体中にふりまかれる。 しかしいつもと違って、そこで夢が終わることはなかった。 その香りに誘われるように、真理子は少女を追いかけ始めたのである。 少女の後を、急ぐでもなく、ゆっくりと、真理子は歩いていった。
/278ページ

最初のコメントを投稿しよう!

578人が本棚に入れています
本棚に追加