2:夢という名の言い訳

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少女は、後ろを振り向くことなく歩き続ける。 彼女のスカートからのびる、白くすらりと整った足は、まるで陶器のように滑らかに動き続けた。 真理子は警戒することなく、彼女の後をついて行く。 あまりに少女との距離が離れすぎているため、今にも見失いそうだ。 しかし不思議と、真理子のスピードが上がることはなかった。 見失ったならそれでもいい、とでもいうかのように、のんびりと進んでいく。 案の定、真理子が角を曲がったところで、少女の姿は消えてしまっていた。 ふうっと息を吐き出して、空を見上げる。 そこには何故か、ミルクチョコレート色の雲が、一つ小さく浮かんでいた。 それから辺りをゆっくり見回して……。 ジリリリリリ…… 驚いて目を見開くと、目の前にあったのは真っ白な天井。 くらくらする頭をゆっくりと持ち上げると、そこにはチョコレート色の雲なんかあるはずもなく、真っ赤な目覚まし時計が身体を震わせていた。
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