2:夢という名の言い訳

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「夢かあ」 呟いてから、ようやく我に返って目覚まし時計を止めると、ようやく静かな朝が帰ってきたのだった。 しばらくベッドに腰掛けたまま、ぼんやりと天井を仰ぐ。 そこにはカーテンの隙間から差し込んだ光に照らされて、白い天井が眩しいくらいに輝いている。 小さな染みの姿は、光でほとんど隠されていた。 大きく手を伸ばして、固まった筋肉をほぐすと、ようやく身体も目覚め始める。 立ってカーテンを開き、目一杯の空気を吸い込んだ。 「あ」 五階建てのマンションの最上階。 その中のベランダの一つに、赤い花がたくさん咲いているのが見えたのである。 何の花かは分からないが、ベランダ一面に緑色の葉を茂らせ、ところどころに赤い花がついている。
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