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その日、真理子が教室に入ると、奈々の机はいつの間にかなくなっていた。
「おはよ、真理子」
「おはよう」
そう言って机に座っても、どうしても視線が、ぽっかり空いた空間から離れない。
隣では奈美が、買ったばかりだというアイライナーを得意気に見せびらかしていた。
「見て見て、これ高かったんだよお。でも、いい色でしょお?」
真理子はほとんど見もせずに、『うん、そうだね』といった。
言ったというよりも、ただ口から押し出したというほうが相応しいくらい、心のこもっていない声だったけれど。
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