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「でね、でね。
それで、買っちゃったんだあ。頑張ったよ!
あ、良かったら貸すから、真理子も使ってみなよお」
奈美の手に目をやると、いかにも人工的なピンク色のアイライナーが、握られていた。
とてもじゃないが、真理子には好きになれそうもない。
小さく笑って断ると、奈美は不服そうに唇を尖らした。
それから、少し間を置いて、言った。
「あ、この色って、奈々思い出すねえ」
それが何を意味していたのかは分からない。
説明しようともせず、奈美はそれを乱暴にポーチに放り投げ、音を立てて蓋を閉じた。
横目で奈美を見ると、彼女の瞼はきっちりとピンク色の線が引かれている。
少し汗で滲んでいるのに気がついて、奈美は確かに生きているのだと思った。
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