2:夢という名の言い訳

78/82
前へ
/278ページ
次へ
前を見て、右を見て。そして左を見ると、そのマンションが目に入った。 その向こう側に、真理子のマンションがある。 何気なく歩き始めた足は、そのマンションに向かっていた。 帰るには通り道なのだから、そのマンションを見てみたいと思ったのである。 どうせ散歩ついでだ。 そのくらいの軽い気持だった。 耳には、流行の音楽が流れ込んでくる。 どこかの店で流しているのだろう。 それは真理子が足を進める度に、少しづつ遠のいて、ついに聞こえなくなってしまった。 しかし真理子の頭の中では、繰り返し繰り返し、音楽が流れ続ける。 最後まで正確に覚えていないため、覚えている部分だけが、延々と続いていた。
/278ページ

最初のコメントを投稿しよう!

578人が本棚に入れています
本棚に追加