2:夢という名の言い訳

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孝に似ている。 そう思ったときには、真理子はエントランスを少し過ぎたところで足を止めていた。 見えたのは一瞬だけだが、確かに着ている服も、真理子の高校の制服によく似ていたようだ。 考えれば考えるほど、彼は孝に似ている気がした。 その時、背後でエントランスの扉が開く音がした。 それに導かれるように、振り向く。 すると、その男性は真理子に背を向けて、すでに反対方向に歩き出したところだった。 確かに、真理子と同じ高校の制服。 孝だ。 確信したのは、単なる直感を信じただけではなかった。 彼の髪から、自分と同じシャンプーの香りがかすかに流れてきたのを感じたからだった。
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