2:夢という名の言い訳

82/82
前へ
/278ページ
次へ
「外泊が続いていたので、薄々感づいてはいたんですよ。 でもね、まさか私の夫に限って、と思っていたんですよね。 なのに、なのに……」 演技なのか本当の感情なのか分からなかったが、突然突っ伏して泣き声をあげ始めた彼女の声は、大げさなくらい大きい。 真理子は、タオルを頭にのせたまま、リモコンを手繰り寄せて、電源を消した。 部屋には再び静けさが戻る。 タオルが髪をこする音だけが、小さく響いていた。 それから真理子は、タオルを洗濯機に放り込むと、ドライヤーをかけることなくベッドに突っ伏した。 体が、鉛のように重かった。
/278ページ

最初のコメントを投稿しよう!

578人が本棚に入れています
本棚に追加