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空も建物も木も、全部灰色に見えた。
ただ、道だけが真っ白で、影一つ入り込む余地がないほどに明るく輝いている。
そんな美しい道をしばらく歩いていると、少し先のほうで、何か赤いものが上から落ちてくるのに気がついた。
それは、ひらひらと風に揺られながら、ゆっくりと舞い落ちてくる。
しかし真理子は急ぐこともなく、同じスピードを保ったまま、それに近づいていく。
その赤いものは、とうとう地面に落ちて、動かなくなった。
真っ白な道にポツンと浮かぶ真っ赤なそれは、血痕のようにも見える。
真理子がようやくそれの元までたどり着いて拾い上げると、それは赤い花びらだった。
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