人喰い

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 漆黒の闇――とまではいかないが、辺りの景色が目には映らないほどの暗い裏路地。暗い道を照らすはずの街灯はもう何年もその役目を果たしていない。  そんな路地に、生暖かい風が、頬を撫でるようにふいている。その気色悪い温度の風と共に、何か濃厚な臭いが漂ってくる。どうやら不快指数が増すのは、その鼻につくような臭いも原因なのだろう。  こんな路地裏に足を運ぶ物好きはそうはいないだろう。なんせ入っていったところで、奥に何があるわけでもない。  そんなとこを通り、奥の少し広まった行き止まりに集まるのは、決まって少し素行が悪い、社会に馴染めない者たちだ。  今日も冬の厳しい寒さの中、毎週恒例の集会のようなものを行うべく、四人の人間が集まる。  いま最後の一人である本多勝正(ほんだかつまさ)が、その路地を歩いている。  集合時間よりも二十分ほど遅れての登場だ。先に集まっているであろう三人に、謝罪の意を込めて、温かいコンビニの肉まんを人数分もって早足で歩く。
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