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冬なのに、やたら生暖かい風が肌に触れるのに気がついたのは、目的地より三十メートルほど離れた場所だった。そしてそれに気がついたとき、違和感のある臭いが、鼻をついた。
しかし彼は数秒立ち止まっただけで、すぐに歩みを再開させた。
違和感の正体より、今は早くみんなのもとにいくのが先決だと、さらに足を早めた。
もし彼がここで違和感に従って早める足を遅めれば、彼は死なずにすんだかもしれない。臭いの正体に気がつけば、逃げるチャンスはあったのかもしれない。
しかし彼は、湯気のたつ肉まんを手に、路地の最奥、いつもの溜まり場に足を踏み入れた。
月明かりだけがたよりのその場所は、しかし通常よりも明るかった。
まず彼の目に飛び込んできたのは、白く淡い光をぼんやりと体から発していた少女だった。
月明かりに照らされてそうなってるわけではない。まるで少女自身が光を放っているような、そんな感じだった。
まるで神々しい雰囲気の少女に勝正は目を奪われた。少女は勝正に背を向けて佇んでおり、また彼の存在に気がついていない様子だ。
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