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病に蝕まれた体で辛くないはずがないのに、それでも姉は病床で笑んで見せた。一点の曇りもない、眩しいほどの笑顔だった。
その笑顔を前に、私は込み上げてくる涙を必死にこらえる。姉の前では笑っていようと誓ったはずだったのに、嗚咽が漏れるのを我慢できなかった。
「ほら、泣かないの」
いつでも勝気な光を湛えていた姉の瞳が、やさしく細められた。その穏やかな声音に心が揺れた。
「だって……」
ついに涙が頬を伝った。泣かないと決めていたのに、やはり私は、どこまでも弱い。姉がいてくれなければ何もできない人間なのだ。
ずっとそばにいて欲しい。もっとしっかりしなさいよ、と呆れながらも、いつも世話を焼いてくれた優しい姉に、私はいつもべったりだった。これからもずっと、そんな日々が続くのだと信じて疑わなかった。
終わりの日は訪れるのだと頭では分かっていながら、その日を想像したことなどない。なのに、その日がこんなにも早く訪れるなんて……。
たまらなかった。突きつけられた現実を、にわかに信じることができなかった。信じたくなかった。
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