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その姿? 一瞬疑問に思ったが、私は自分の手を見て驚きの声を上げた。そこにあったのは見慣れた、しわを重ねた手ではなく、滑らかな娘の手だった。
驚きながら自分の顔に触れる。姉がくすくすと笑っている。
私は若い頃の姿に戻っていた。おそらくは、姉と別れた十五歳の頃の私だった。
「ここではすべてが自由なのよ。誰もが在りたい姿でいられる。……あんたは、ずっと私のことを覚えててくれたのね」
「あたりまえでしょ。私は、お姉ちゃんの妹なんだから」
挑むように言ってやると、突然、姉に抱き寄せられた。提灯を持っていない方の手で、優しく頭を撫でられる。懐かしい、姉の匂いがした。
「約束したからね。ここで案内人をしながら、ずっとあんたを待ってた。いろんな光を見たわ」
見てごらん、と姉が提灯をかざした。その瞬間、真っ暗だった世界に灯りがともった。
知らぬ間に私は橋の上に立っていた。木製の、美しい橋だった。橋の向こう側には木々の緑と、大きな木造の建物が見えた。
宙をあたたかな光がいくつも浮遊していた。そのホタルのような光は皆、橋の向こう側に向かっている。あまりに幻想的な光景に、私は息をするのすら忘れた。
「あの光はね、みんな、命の輝きなのよ」
姉が、無数の光を愛おしげに見上げている。
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