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序章 竜に護られし世界
あるところに、太古の時代から偉大なる竜神に護られた世界がありました。
言葉に力が宿るこの世界では、その力が強き者は【詩徒(しと)】と呼ばれ、言葉を紡ぐことで傷や病を癒し、闇を退けて、人々を護りました。
さらに竜神は、その中で最も長けた娘を【詩姫(うたひめ)】として、自分と心を通わし、そばで仕える役目を与えました。
なぜなら、大いなる竜は繁栄と破壊、正と負どちらの力も持っていたからです。
ひとの言葉を聞き、心を交わしている間は、自身の闇を封じ、世界に豊穣を与えることができると竜神は知っていたのでした。
詩姫の役目は竜神に仕え、共に世界を護ること。
ゆえに、詩姫に選ばれることはとても名誉であり、人々は自分の一族から詩姫が生まれると、盛大な宴を催して祝ったのでした――――
〈教会出版 国家高等教会監修『詩姫の伝承』より〉
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