繋ぐのは心だと

5/16

1916人が本棚に入れています
本棚に追加
/486ページ
その日の放課後のことはよく覚えている。 二人きりで帰るのは初めてで、校門をくぐって、同級生に言う「サヨウナラ」という言葉でさえ初めて言ったみたいに思えた。 心が洗われた、というべきか。心に純情という薬みたいなものが塗られたみたいだった。 「牟田くんって誕生日いつ?」 途切れ途切れの言葉をぶつけ合いながら、家に向かう途中、ミアがそんなことを訊いてきた。 「誕生日?四月だけど」 「あっ。あたしも四月だよ。何日?」 「二十九日」 「じゃあ、あたしのほうが先輩だね。四日だから」 「そんなに変わんねーだろ?」 「変わるよー。ていうかさ四月生まれって損とか思わない?」 「損?」 「入学してすぐだから、友達にお祝いして貰えないでしょ?」 「ああ。俺あんまり意識したことねーからわかんねーや」 「男の子ってそんなもん?」 「祝い合うことなんかねーよ。あと、毎年祝日だし。親にしか祝って貰ったことないからかも」
/486ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1916人が本棚に入れています
本棚に追加