繋ぐのは心だと

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「あたしだって、毎年春休みだから何もして貰ってないよ?」 「そっか。そう考えたら損かもな」 小さな共通点があるだけで、嬉しくなった。つくづく恋とは便利なものだ。それだけで、心が満たされるんだ。 少し、大きくなった俺は思う。 人は常に心の容量が決まっていて、そこに色んな物を詰め込むことが出来るのではないかと。 一瞬、一瞬で、中身は変わる。きっと、俺が酸素を取り込みながら、他の何かを取り込んで、減らし続けている。 誰かに言われたひどい言葉、友達と蹴ったサッカーボール、面白かったテレビドラマ、泣きたくなるような週刊誌の中の惨劇。 例えばそんなことを見て、目の前で並べながら、自分でいるものといらないものを瞬時に判断出来る能力は誰だって持っていると思うんだ。 たまに選び間違えると、心が痛くなってしまうのはそのせいだと思う。 たぶん、必要のないものを選んでしまったのだから。 食事をして栄養をとるのと同じくらい自然な行為。ただ、見えないだけで。だから取り違えることもあるのだと。 心というものが、満タンになっているときはそれに気が付かないのに減っているときだけ、満たして欲しいと敏感になれる。
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