序章

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警察官が慌ただしくアパートの一室を行き来している。 周りを野次馬と報道陣が取り囲む様に群がる。 202号室。 部屋の中には鼻を刺激する臭いと、焼け焦げた家具。 そして全身大火傷で命を落とした男の遺体が転がっていた。 ハンカチで口を覆い、中年の刑事が遺体を覗き込む。 「自殺か? だとしたらどうしてこんな死に方を選ぶのかね」 慈悲の表情を浮かべながら遺体に手を合わせた。 「益田警部、男性にはどうやら同棲していた女性がいるそうです。 しかし事件の前日に行方を眩ませています。」 若い刑事が中年の刑事にそう伝える。 「自殺の線と事件の線で捜査するか。まずは同棲していた女を探し出そう」 益田が周りの刑事に指示をすると、若い刑事が遺体の臭いに耐えかねて嗚咽を引き起こした。 「おいおい、青池。 いい加減に仏様にもなれやがれってんだ」
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