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「まともに戦ったら確実とは言えないから九割ってとこだな。あっちには一人、いやもしかしたら二人、イレギュラーがいるからな」
「イレギュラー?」
ロジーの言葉を聞いたブノアは微かに眉を潜め、ロジーを軽く睨む。
その目は言外に、
『当然対策はあるんだろうな』
と言っていた。
「一応言っとくと、そのイレギュラーへの直接的な対策はないよ」
なんの迷いもなく吐き出された言葉は予想外すぎるもので、ブノアは一瞬声を失った。
「なっ!?……ふ、ふざけるな!万が一にも負けてはならないんだぞ!」
「だぁから、まともに戦ったら九割だって言ってるだろう?誰が犯罪者と正々堂々戦うってんだ。こっちから攻めるならともかく、向こうから来てくれるなら……はは、楽しくなりそうだ」
ロジーはその反応を楽しむかのようにその口角を吊り上げ、片手を軽く上げて足元の闇に沈んでいく。
が、すぐにロジーは何かを思い出したように振り向き、ブノアに向かって小さな鉄の造形物を放り投げる。
ブノアが少しもたつきながらそれを受け止めると、ロジーは沈みながら言った。
「それ、“彼女”のところで見つけたんだ。どうやら少し目を離している隙に害虫が食いついたらしい。まぁ、どうせ今さらって感じだけど、一応報告しておくよ。じゃあ今度こそ」
少し口早に言い終えたロジーは、言葉通りもう何も言わずに消えた。
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