輪廻の箱庭

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昼下がりの病室。 暖かな日の光がベッドの端を照らす。 そんな穏やかな光景の中で、一人の少女がベッドの上で目の前の鉄の造形物を必死にいじくり回していた。 彼女の名はメイヴィ。 とある理由でこの病院に入院しており、今日は特に検査もないため、最近のマイブームである知恵の輪と激戦を繰り広げていた。 ついに気力が途切れ、メイヴィは封を開けた瞬間から形状が全く変わらないそれをシーツの上に投げ捨てる。 その拍子に少し跳ねたままのエメラルドの髪が目にかかり、メイヴィは苛立たしげに頭を振った。 「あーもう!なんやねんこれ!ほんまに外れるんかい!」 二時間。 彼女がそれを解体しようと奮闘した時間である。 病室で一人、小さな鉄の輪っか達を解体することにひたすら没頭する姿は、見る人によれば可哀想に見えただろう。 「もーやめた!もうやらへん!へーんだ!」 言いながらメイヴィはベッドに仰向けに倒れ込もうと、背後に身をそらす。 が、普通に起きあがってから少し頭側に寄っていたため、頭の進行方向には固いベッドの縁が。 ガッ! 「うっ!?」 鈍い音が響き、メイヴィの後頭部に突き抜けるような激痛が走る。 「っ~!?」 ぶつけた箇所を両手で抑え、声にならない悲鳴を上げながら狭いベッドの上を転げ回る。 当然のごとくベッドの端に到達し、メイヴィは大きな音と共に床に落下した。
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