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「入ってきてください。……では、私は少し部屋の外に出ていますね」
サフェスが呼びかけた数秒後、ゆっくりと扉が開き、出て行くサフェスと入れ違いに、“何か”が現れた。
「何者だ……いや、何だ、お前は……」
肩までの透き通るような緑の髪は無重力空間にいるかのように少しだけ浮き上がり、その海溝の奥深くを見つめているかのように深い瞳は血のような紅い光を微かに放っている。
纏う衣装は漆黒のドレス。
所々に白いフリルが入っている。
首回りから全身に被さるように何本も細い短冊状の布が垂れており、その不気味さを増している。
そんな異様な雰囲気を放つ少女が、そこにはいた。
「あなたがロードとかいう方かしら?」
「……そうだ」
「ヘブンズゲートを開けたいんですってね」
そこでやっと少女は少しだけ表情を変えた。
まるで何かを悟っているかのような、自虐的な笑みに。
「そうだ」
そのことに疑問を覚えつつも、クロードは首を縦に振って少女の言葉を肯定する。
「そう、なら、覚悟は出来ているのかしら。世界の進む道を左右する覚悟は」
ここでクロードは、自分の人生を大きく変えた赤髪の少女を思い出す。
彼女にも似たようなことを言われたな、と。
故に悩むことなく答える。
覚悟なら、あの時既にしたのだから。
「当たり前だ」
「……ふふっ、なら、今回の作戦、私を連れていってくれるかしら。ヘブンズゲートにたどり着けたら話してあげるわ。その開け方を」
少し釈然としない部分はあったが、ねばったところで目の前の少女は口を開かないだろう。
そう判断し、クロードは手を差し出した。
「了解した。これからよろしく頼む」
「こちらこそ。私の名前は――」
少しだけ微笑み、少女も雪のように白い肌をした手を差し出す。
「――メイヴィよ」
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