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「いえ、そういう訳じゃ……いや、少しはあります。人を殺すことに対する抵抗、恐怖が。でも、迷ってる場合じゃない。……ロードは……僕が……」
「…………」
両の拳を限界まで握り締め、体を震わせるラウルを端から見ていた茶髪の男、ロジー。
ロジーは憎しみに染まっていくラウルの頭をポンと叩き、その意識を現実に引き戻すと、そのまま出口に向かっていく。
「ま、そういうことだから、後は頼んだぞ」
「っ……はい。了解です」
背後で慌ただしく背筋を伸ばしているラウルに穏やかな笑顔で手を振り、ロジーは扉をくぐった。
そして扉が音を立てて閉じると、その表情は一変する。
浮かぶ笑顔は先程とは全くの別物だ。そこには狂気と狂喜しかない。
「さぁて、ゲーム開始の合図をするのはそっちだ、ロードくん。さっさと来てくれよ。待ちきれなくなっちまう」
「そこまで楽しそうな顔は久しぶりだね、ロジー」
そんなロジーに近づく小さな少年が一人。名はフレイ。チーム・フォースのエーク(Ⅰ)の地位についている。
「ああ、フレイ。なんせこの国がこんなに揺れることなんて前代未聞だからな。高揚もするさ。それに、面白い余興もあるし」
「またロジーだけ高みの見物?ずっこいなぁ」
その言葉に苦笑して頭をかき、後ろを向いたロジーは、足元に渦を作り出す。
「はは、そう言うなよ。じゃあ、頼んだぞ」
「へーい」
気怠げな声を上げるフレイを見て小さく笑い、ロジーは黒い渦に沈んだ。
「くっそ……」
背後で消えそうなくらい小さい声を漏らし、顔を歪めるフレイに狂気に染まった瞳を向けながら。
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