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†
「いよいよね……」
「ああ」
夜。
ジャングルのように連なる高層ビルの一つ。その屋上に、複数の影が佇んでいた。
風が強く、夜の闇を押しのけるような彼らの純白の戦闘服の裾がバタバタと音を立ててなびいている。
視線の先にはサーチライトの光が何本も蠢く巨大な城。
普段とは全く違った雰囲気を放つ王城の姿に、眼下の道を行く数人の人々も物珍しそうな視線を向けている。
それだけ警戒しているということだろう。ジャッジメントを。
「…………」
クロードは時計に目を落とす。
そして背後の仲間たちに呼びかけた。
「時間だ。行くぞ」
二言目と同時に全員の足下に風が巻き起こり、その全身がゆっくりと浮き上がる。
そしてサーチライトの届かない高度まで上昇すると、そのまま王城の真上へと移動した。
そのまま空中で静止すること数秒。
「今だ」
風が消え、落下する。
クロード達は真っ直ぐに落ちているだけだ。しかし、サーチライトの方がクロード達の進路を避けるように動く。
これはサーチライトを動かしている兵が味方というわけではない。
クロードが全てのライトの動きを読み、それらがルートから同時に離れるタイミングを割り出したのだ。
進んだ先には王城中央の尖塔。
「っ……」
着地の少し前に再度風が巻き起こり、それを受けて落下の速度がゆっくりと緩和される。
そうして難なくその屋根に降り立ったクロードは、チラリと背後を振り返る。
その瞬間、突如城門から耳を割るような爆発音が響き、そのすぐ後に城門以外にも城壁の至る所に紅の爆炎が吹き上がった。
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